どうもヒロです。
みなさん、自動車はお持ちでしょうか?ところで、その車がどのように作られるか知っていますか?
私は自動車メーカーの生産工場を担当している技術職員です。自動車の作り方や、いい車を作るまでの苦労をまとめてみました。
自動車が完成するまでの流れ
プレス工程
鉄鋼メーカーから巨大な鉄ロールがプレス工場に納品されるところから車作りが始まります。
鉄ロールを車の大枠に切断していき、車の型にプレスをして形を出していきます。
プレスでは大きく分けて、ドア、ルーフ、フード(ボンネット)、サイドメンバー、フロアメンバーに分けてプレス機に投入します。
プレス工程は型との戦いです。プラスの型が悪いと製品に割れやシワができてしまいます。製品としては失格です。
新しい車を作る際、プレスの技術者は車の設計者と図面検討をします。設計者はかっこいい車のを作りたいので、エッジの効いたボデーラインを引いてきます。
しかし急な曲がりはプレスした際に製品の不具合につながります。プレスにはあらかじめ決められた生産要件があるので、それを満足した図面でしか作られません。
よくモーターショーなどで近未来的なデザインの車が商品化されないのは、実際に作れる技術が無いことが大きな原因です。
ボデー(溶接)工程
ボデー工程ではプレス工程で成型されたボデーのパネルを溶接していきます。溶接はほとんどがロボットです。
車がラインにのって搬送されるのですが、その両脇に多関節のロボットが何台も配置されています。溶接ロボットは決められたポイントを確実に溶接しなければいけません。
溶接は単にパネル同士だけでなく、部品を取り付けるためのスタッドボルトやナットも溶接をします。
ロボットの動きはティーチングというプログラムによって細かく決められています。自動車メーカーは新車が導入される際もですが、現行モデルのモデルチェンジがおよそ3年ごとに行われます。
車の形状が変わるたびに溶接点も変わりますので、毎回ティーチングの修正をしなくてはいけません。
ボデー工程はロボットとの戦いです。溶接がうまくできなければ車の強度や性能に大きく効いてきます。私は組立工場の技術職ですが、ボデーの溶接精度が悪いと部品が組付かないことがあります。
私の同期でボデー工程に配属された友人はとても神経を使う仕事だと言っていました。
塗装工程
塗装工程はボデー工程までで完成した車体に塗装をしていきます。塗装は主にロボットが行いますが、ロボットが入らない箇所は人が塗装します。
塗装は下塗り、中塗り、上塗りの主に3回行われます。これは車のグレードによってさらに1層追加されることもあります。
塗装ではいきなり車に塗装を行いません。私の会社で作っている車は電着塗装をしています。ボデーを塗装する前に電着プールに入れ、ボデーのパネルに電気を持たせます。そうすることで塗装の付着をよくしているのです。
塗装工程では塗料を吹き付けるだけでなく、シーラーも塗ります。シーラーはパネル同士の継ぎ目に塗って水や空気の侵入を防いでいます。
また静振材をボデーに塗ることで地面からの振動を吸収し、乗り心地をよくする工夫がされています。
工場内では色コードは3桁の数字とアルファベットで管理されています。
塗装工程の技術者も車の設計者と会話をします。やはり車の形状がいびつだったりすると、どうしても塗れない部分ができてくるからです。
技術者は塗料の出る角度や速度を地道に計算したり、実験することで、車のデザインに制約がないように日々努力しています。
組立工程
組立工場で実際に車の部品を組付けていきます。これまでのプレス、ボデー、塗装はロボットがメインでしたが、組付けはほとんどが人が作業をします。
塗装されたボデーが組立に入ると、エンジンルーム内の配線やブレーキ部品を取り付けます。室内の部品は人が車に乗り込んでペダルやカーペットなどを取り付けて行きます。
車をハンガーで吊った状態で下らからエンジンやサスペンションをリフターで上昇させて組付けます。
組立工場では重量物は基本的には設備が単体でハンドリングしたり、重量補助を行います。
そしてブレーキ液やガソリンを注入して検査工程へ引き継ぎます。
組立工場のラインは1つの工程の作業エリアと時間が決められています。生産数が上がるとラインのコンベアのスピードが上がるため、人を増やして対応をします。
組立工程では人が作業をするので、様々な不具合が起きます。ボデーにキズが入ったり、部品が破損したりします。不具合が起きた場合はラインを止めて対応します。
組立工程の技術者も車の設計者と会話をします。図面上で工具が入るか、設備が使えるかを確認し、問題があれば図面を変えてもらいます。
検査工程
検査工程ではボデーにキズなどがないか調べる外観検査、性能に問題がないか調べる機能検査があります。機能検査は車の走る・止まる・曲がるに関わる項目を確認します。
ドラムテスターで実際に車をある一定速度で走らせて問題がないか、ハンドルを切った際にタイヤが狙った角度に曲がるかなどを確認していきます。
検査工程では国で決められた検査項目の他に、それぞれの自動車メーカーが独自で定めた検査項目を確認します。高い品質だと言われる車はその分、厳しい検査を行っています。
興味がある方は工場見学がおすすめ
自分の乗っている車が作られるところを見たい方は、実際に自動車メーカーの工場見学に行くとよいでしょう。私の会社でも工場見学を受け付けています。毎日のように小学生や中学生が来ています。
また通常はラインの上の参観通路からしか見れませんが、生産車種を買ったオーナーの方は実際の組立ラインの横で見学することもできます。
これは各メーカーや工場によっても対応が違うと思いますので、問い合わせしてみるとよいと思います。
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